2023/03/10

ブラジキニンの初痛機序


血管内皮の破壊により、血漿タンパク質である血液凝固因子第Ⅻa因子(ハーゲマン因子)により血漿カリクレインが活性化される。


血漿カリクレインがキニノーゲンのペプチド結合を加水分解し、ブラジキニンとカリジンに分解する。

(ブラジキニンを生成する因子は血管修復に関わるので、ブラジキニンは血圧を低下させる作用がある。)


ブラジキニンはG蛋白共役型受容体であるブラジキニン受容体(B2R)の活性化によりPKCを活性化し、PKC が直接TRPV12つのセリン残基をリン酸化することでTRPV1の活性増強をもたらす。

また、TRPV1の活性化温度閾値を32度にまで低下させる。


さらに、ブラジキニンがキニナーゼIによって分解されたときに生成される des‐Arg9‐BK (DABK)が外傷等の刺激によって発現が誘導されるブラジキニン受容体(B1R) と結合する。

これにより、活性化されたB1Rは痛みの増強や炎症反応の維持などを引き起こす。


ここに、プロスタグランジンE2の作用も加わり痛みが増強する。

2022/03/09

ATPの必要量


モル質量

ATP   507.181 g/mol  


ギブズエネルギー

ATP  -50kJ mol-1   →   50000J 


1cal =  4.18605J


50000J ÷ 4.18J = 11961.7


ATP   11961.7cal   →  11.96kcal  →  12kcal/mol


2400(1565歳男女平均推奨kcal) ÷ 12kcal = 200


200 × 507g = 101400g → 100kg


毎日、約100kgATPが必要と考えられる。


ストライヤー内では2000kcal推奨の場合で計算しているため、ATP84.5kgが必要という数字になる。


これに対して保存できるATP量は250gとされているので、毎日1molATP400回はリサイクルされないといけない。

1molATPが、3分半に1回はリサイクルされないといけない計算になる。



また、別の意見もある。


脱共役の割合は60%とあるので、実際に必要なATP2400kcal40%にあたるとも考えられる。


そうすると、

2400kcal × 0.4 = 960kcal


960kcal ÷ 12kcal = 80


80 × 507g = 40560g → 40kg


毎日、約40kgATPが必要と考えられる。


1molのATPは、毎日約160回必要のリサイクルが必要となる。

1molATPが、9分に1回のペースでリサイクルされないといけない。



結論は、どちらにしても圧倒的にATPが足りない。

足りないと細胞分裂から筋収縮から様々な場所で弊害が出る。

だから、我々はしっかりと糖質を補う必要があるのだ。

2021/09/26

磁気ネックレスって・・・

五本木クリニックの桑満先生が話題に上げていたので便乗してみました。

先生のブログはこちら


【磁気治療器VSプラセボ】厚労省は大丈夫か?磁気治療器が承認された根拠はスッカスカ!!??

 https://www.gohongi-clinic.com/k_blog/44417/



ってことで、実際に企業がどんな謳い文句をしてるのかと、某大手企業のサイトをチェックしてみましてた。


すると、


「磁気が血管の内側にある内皮細胞に働きかけて、血管拡張物質であるNO(一酸化窒素)の合成を促進すると考えています。

この物質の働きで血管が徐々に拡がり、血行を改善していきます。」


と、ありました。


これだけだと、どう内皮細胞に働きかけてるのか分からなかったので、他のサイトもチェック。

すると、こちらのサイトに

https://jiki-labo.com/why/


①磁気をかけると、コリンエステラーゼの働きが弱まり、分解されるアセチルコリンの血管に作用する量が増えます。

②アセチルコリンはその量に比例して、血管拡張物質である一酸化窒素を増加させます。

③血管の内皮で増加した一酸化窒素は、血管の筋肉である血管平滑筋に作用し、血管を弛緩・拡張させ、血液の流れを良くします。


と、ありました。


これはかなりしっかり作り込まれているので、ほとんどの人が納得してしまうのではないでしょうか。

この表現からも、私が納得してない感が伝わってるとは思いますが、何が引っ掛かっているのかを説明します。



磁気によって、コリンエステラーゼが阻害されるという部分のプロセスに無理があるのです。



確かに、磁気は電荷を持つ粒子が運動することによって生じるので、電荷を持つ原子・分子と関係することは可能と言えます。

ただ、問題はどう関係するのかです。


コリンエステラーゼという酵素を阻害するには、2つの方法があります。


1つ目は、カルバモイル化させる方法。

2つ目は、乱暴ですが、無作為に分子そのものをぶっ壊す方法です。


さすがに2つ目はないと思うので、この説を立証するためには、どうやって磁気がコリンエステラーゼをカルバモイル化し続けるのかと、その特異性を付けてるのかをはっきりさせないといけません。

何故なら、磁気が全ての分子のカルバモイル化に関与していたら、人間はすぐに機能しなくなり死んでしまうからです。

だから、コリンエステラーゼにだけ働く必要があるのです。

数千種類ある酵素のうち、たった1つにだけ都合良く作用する磁気。

ちょっとムリがあると思えてなりません。



では、何故血行が良くなったり楽になると感じる人がいるのか。


おそらくプラセボによるものでしょう。

だだ、プラセボにも過程が存在します。

人間が有機化合物の塊である以上、過程なしで何かが変わることはありえません。

その過程はおそらくこうでしょう。


人間は、意識して筋肉に緊張を与えられるのと同じく、意識して筋肉の緊張を抑制させることができます。

詳しくいうと、筋肉は弛緩をイメージすることで抑制性介在ニューロンを介し、皮質脊髄路の興奮性を一時的に安静時より有意に減少させることができるのです。

そのため、磁気ネックレスをしたから大丈夫という安心感が筋肉の弛緩のイメージに繋がり、実際に筋肉が緊張が抑制されリラックスしたことで血管が拡張したのでしょう。


こう考えると、プラセボでも純粋な人には良い効果を示し、半信半疑で着けてる人には筋肉弛緩のイメージができてないので、効果が分からないのも頷けます。



「結論」

磁気でコリンエステラーゼを阻害するというエビデンスには無理がある。

効果を感じてる人には、せっかくプラセボが作用してるのでそっとしといてあげましょう。





ついでに、プラセボで起きている過程を専門的にまとめてみたので、知りたい方は最後までどーぞ。


プラセボとはいえ、リラックスすると副交感神経からアセチルコリンが分泌され、血管内皮細胞に存在するM3受容体に作用し、一酸化窒素合成酵素(NOS)が活性化されアルギニンから一酸化窒素(NO)が産生されます。


内皮細胞内で産生されたNOは、平滑筋細胞膜を自由に通過して、平滑筋内に入り可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化します。

可溶性グアニル酸シクラーゼはGTPに作用してcGMPの産生を促進し、Gキナーゼを活性化。

Gキナーゼによるリン酸化は、Ca2+の筋小胞体への取り込み促進、Ca2+の細胞外への排出促進、細胞内のCa2+濃度が低下するとミオシン軽鎖キナーゼが不活性化され血管平滑筋の弛緩をもたらします。

それにより血行が良くなったのでしょう。



YouTube

https://youtube.com/channel/UCJ8mI-W6yVy0FHLNeRx35yQ


instagram

http://www.instagram.com/yujilaluz/





2020/07/10

気圧と自律神経の関係

「低気圧になると、交感神経と副交感神経、どちらが優位になるの?」

ネットでは両方の意見が上がっていますので、もはやどちらを信じて良いのか分かりません。
そこで、一つずつ解説して行こうと思います。

まず、気圧とは気体の圧力を言い、その気体も物質です。
その物質の内容は、約78%が窒素、約20%が酸素、その他約2%となります。
そのため、気圧が下がると言うことは、物質内容も減ることになります。
この酸素が減る状況は、低酸素症と同じ定義に当て嵌められます。

取り込む酸素量が少なくなると、大動脈小体と頚動脈小体が酸素分圧の低下を検知して、それぞれの求心性刺激が延髄の呼吸中枢を刺激して換気を促進させます。
要はたくさん空気を取り込もうとします。
このとき働くのは交感神経になります。

また、構造的には、低気圧による血管の外圧が減ることで血圧も下がります。
この血圧の低下を、大動脈弓と頚動脈洞が検知すると、心拍数を増やして血圧を調節しようとします。
このとき働くのも交感神経になります。

これらの機能は反射によるものなので、身体が正常であれば必ず起こる反応になります。
よって、

「低気圧になると交感神経が優位になる」

がエビデンス的に理に叶っていると考えます。


2020/06/05

乳酸

乳酸は、疲労物質の性質も持つが、同時にエネルギー物質でもある。

乳酸の代謝経路は以下である。

激しい運動時の速筋繊維では、解糖によるピルビン酸の生成速度がクエン酸回路によるピルビン酸の酸化速度を上回る。
増え過ぎたピルビン酸は、乳酸デヒドロゲナーゼにより乳酸に還元され、細胞は酸化還元バランスを取り戻す。
乳酸は強い酸のため、細胞内に残ると細胞内のpHが低下し、筋肉タンパク質が変性して筋肉が障害を受けてしまう。
そこで、乳酸を代謝する負担を筋肉から取り除くために、乳酸を他の組織に移動させる。

一つ目の組織は、心筋細胞や遅筋繊維である。
ひとたび酸素の豊富な細胞に取り込まれると、乳酸は酸化され再びピルビン酸に戻り、クエン酸回路と酸化的リン酸化を経てATPを生成する。
これらの細胞がグルコースの代わりに乳酸を使うことで、循環血中のグルコースは速筋線維で利用されやすくなる。

もう一つの組織は、肝臓である。
肝臓に移動した乳酸は、ピルビン酸に変換され糖新生の経路に入りグルコースとなり循環血中に放出される。
この糖新生の経路をコリ回路という。

参考文献:ストライヤー生化学より